【#05】「第89回アカデミー賞授賞式分析1:『ラ・ラ・ランド』」
Posted on 3月 10, 2017
第89回アカデミー賞授賞式のWOWOW生中継を2月27日朝から、「テレビの前でメモを取りながら観る」という例年の「仕事」を楽しみに、2月の激務をこなしていました。ところが、この日も大事な仕事の打ち合わせが入ってしまい、生中継は、開催当初のセレモニーだけ見て、司会者のジミー・キンメルのウイットに富んだ「開会の言葉」を聞いただけで、そのあとの部分は、夜のWOWOW字幕放送で見ることになりました。
日中の情報では、『ラ・ラ・ランド』(LA LA LANDのLAはLos Angelesのこと)が沢山優秀賞を取ったらしいこと、何かトラブルが起きたことくらいがわかっただけでした。新聞やテレビのニュースしか見られない人たちには、作品賞の結果が間違って伝えられるハプニングばかりが記憶に残っただけで、今年のアカデミー賞授賞式も終わったようです。この「映画紹介」コラムを使って、その中身の分析をしながら、映画の話、俳優・女優の話、ハリウッドの話、アメリカの話などしていきます。
まず、『朝日新聞』2月27日夕刊の一面では、「トランプ氏の移民政策に抗議:欠席のイラン人監督受賞:アカデミー賞」と大見出しがつけられました。さらに12面では、「レッドタートル アニメ部門逃す」と見出しされて、アカデミー最優秀賞受賞結果が伝えられていました。日本の新聞ですので、日本に関する結果を大きく伝えていて、「スタジオジブリが制作に関わり、長編アニメ部門でノミネートされていた『レッドタートル:ある島の物語』は受賞を逃した」とありました。長編アニメ最優秀賞は、ディズニーアニメ『ズートピア』が受賞したので、新年度のこども学部で筆者担当科目「英語コミュニケーションA(こどもの文化)」では、アカデミー賞授賞式長編アニメ賞発表の場面を見せることになりそうです。
さらに夕刊では、映画『沈黙―サイレンス』についても「日本関連作品ではほかに、遠藤周作の小説が原作で、米国の巨匠マーティン・スコセッシ監督が映画化した『沈黙』は撮影賞で候補となっていたが、受賞はならなかった」と報告されています。
今回のコラムでは、『沈黙』を題材にしたいと予告していましたが、2月は仕事に忙殺されて叶いませんでした。すでに映画館での上映もほぼ終わっているようで、残念です。来月から新年度で、私が担当する前期科目「歴史入門」が始まります。「ギリシャ神話・旧約聖書・ケルト伝説」をテーマとする講義「歴史入門」前半のうちに、このコラムで必ず映画『沈黙』を紹介します。キリスト教は重要なテーマの一つとなっていますから。アカデミー賞授賞式連作を終えたら書きますので、しばしお待ちください。
海での処刑場面が圧巻だった『沈黙』が受賞できなかった撮影賞で、最優秀撮影賞を受賞したのは、『ラ・ラ・ランド』でした。『ラ・ラ・ランド』は、1月8日に開催された第74回ゴールデングローブ賞授賞式で、史上最多7部門で最優秀賞を受賞しました。映画紹介2回目の「カラーパープル」で説明したアメリカにおける各種の賞では、ゴールデングローブ賞について説明しなかったので、ここでしておきます。ハリウッド外国人記者クラブ(HFPA)が主催する映画賞のことで、2か月後のアカデミー賞に大きく影響を与えると言われ続けてきました。『ラ・ラ・ランド』は、7部門受賞できたのでしょうか。
アカデミー賞には全部で23部門の賞が設けられていて『ラ・ラ・ランド』は、1997年公開の映画『タイタニック』と並ぶ史上最多の14候補となりました。正確には13部門で14候補(歌曲賞で2作品あるため)です。主人公ミア役を演じたエマ・ストーンの主演女優賞など、6つの最優秀賞を受賞しました。主演女優賞の他は、監督賞、撮影賞、作曲賞、歌曲賞、美術賞の6部門です。ゴールデングローブ賞よりは一つ少なかったですね。
結果が間違って伝えられるハプニングがあった作品賞が、もし『ムーンライト』ではなく『ラ・ラ・ランド』だったら7部門でしたね。ちなみに、ゴールデングローブ賞作品賞は、2種類あるため「ドラマ部門」で『ムーンライト』、「コメディ・ミュージカル部門」で『ラ・ラ・ランド』と仲良く作品賞を分け合う結果となりました。