岩本裕子研究室

PROFESSOR HIROKO IWAMOTO'S OFFICE

【NO.15】St.Patrick’s Dayに映画『Wicked』の話・ニューヨーク出張報告・その3 #ウィキッド #エルファバ

Posted on 3月 26, 2025

皆様、こんにちは。岩本裕子です。埼玉県にある浦和大学で教員をしております。

本日は2025年3月17日です。欧米ではこの日を「セント・パトリック・デー」と呼び、アイルランドの守護聖人である聖パトリックを祝う日となっています。アイルランドの象徴色である緑色の服を着て、カトリックの教会に行くのが習わしで、私も今日は緑色のブレザーを着てきました。

本日は第15回目の放送となり、ニューヨーク出張報告の第3回でもあります。

次回の第16回も引き続きニューヨークに関する話題を予定しています。さて、本日は緑のブレザーを着てきたので、緑の肌を持つ女性の話から始めます。

今月初め、映画『ウィキッド』が公開されました。2月にブロードウェイでミュージカル『ウィキッド』を観てきたのですが、あまり気が進まないながらも観劇したのは、映画との比較が必要だと思ったからです。皆さんはもうご覧になりましたか?私の周囲の若い人たちが「ウィキッド観に行く!」と話しているのが耳に入ってきました。

今日は、この映画『ウィキッド』の内容そのものというよりも、「なぜこのようなミュージカル映画が生まれたのか」という背景についてお話ししたいと思います。

そもそもの始まりは、1900年に出版された『ワンダフル・ウィザード・オブ・オズ(オズの魔法使い)』という児童文学作品です。作者はニューヨーク生まれのライマン・フランク・ボームで、晩年はロサンゼルスのハリウッドに移住しました。この物語はアメリカで爆発的な人気を博し、39年後にはハリウッド映画『The Wizard of Oz』として制作されました。

この映画では、主人公ドロシーをジュディ・ガーランドが演じました。彼女は当時まだ子役でしたが、のちに大スターとなる人物です。物語は、ドロシーが愛犬トトとともに竜巻に巻き込まれ、不思議なオズの国へと飛ばされるという話です。

その後、この物語はブロードウェイでミュージカル化され、さらにハリウッド映画『The Wiz』としても製作されました。『The Wiz』は1978年に公開され、原作から約80年を経ての映像化となりました。このとき、ドロシー役を務めたのは黒人女性歌手のダイアナ・ロスです。彼女は現在80歳近い大スターで、マイケル・ジャクソンの遺児の後見人を務めていたことでも知られています。

この『The Wiz』には、マイケル・ジャクソンも出演して、ドロシーの仲間のひとり、「かかし」を演じていました。『オズの魔法使い』は、こうして映画、テレビ、舞台とさまざまな形で子どもたちの心をつかみ、100年以上も人々に親しまれてきた物語です。

さらに、2003年にはブロードウェイのガーシュウィン劇場で『ウィキッド』として新たにミュージカル化されました。すでに20年以上もロングラン上演されており、私も先月、現地で観劇してきました。

この『ウィキッド』は、『オズの魔法使い』の前日譚という位置づけで、ドロシーがオズの国に到着する前の「良い魔女」と「悪い魔女」はどのようにして生まれたのか、という背景が描かれています。

ネタバレになりますが、ブロードウェイ版ではいくつもの重要なエピソードが描かれていたのに、映画版ではそれらの多くがカットされていました。映画の冒頭では、画面の左隅からドロシーと三人の仲間が歩いていく姿が描かれ、その向こうにオズの国が見えるシーンで始まります。

つまり、まだドロシーが到着していない段階のオズの国で何が起こっていたのか——それが『ウィキッド』の物語です。映画の右隅には「Part 1」という文字が表示され、「え?Part 2、Part 3があるの?」という終わり方でした。2時間以上の長編映画のラストでは、緑の肌をしたエルファバが箒に乗って飛び去り、「To be continued(つづく)」の文字が映し出されました。

皆さんは『ウィキッド』をどのようにご覧になったでしょうか?私が今回面白いと感じたのは、緑の肌を持ち「悪い魔女」と呼ばれる女性の名前——エルファバという名前の由来についてです。

実はこの「エルファバ」という名前、原作者であるライマン・フランク・ボーム(Lyman Frank Baum)の頭文字「L・F・B」から名づけられているのです。物語は原作者の手を離れて新たな展開を見せてはいるものの、こうして原作者への敬意が込められていることに感動しました。

映画をご覧になる際には、可能であれば字幕版でご覧いただくことをおすすめします。声優のファンの方には申し訳ないのですが、ぜひ英語でエルファバの声を聞いてみてください。

セント・パトリック・デーの本日、緑のブレザーを着て収録に臨んだ私から、緑の肌を持ち、やがて「悪い魔女」と呼ばれるエルファバのお話をさせていただきました。
これで、岩本裕子研究室映画コラム「YOUTUBE」第15回を終了いたします。次回もまた、皆さまのお耳にかかれることを楽しみにしております。

次回も引き続き、ニューヨークのお話をさせていただく予定です。本日もお聞きくださり、ありがとうございました。

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