映画コラム#23 映画『ツイスターズ』と『オズの魔法使い』
Posted on 8月 10, 2024
イスラエルがガザ地区攻撃を止めないことへの、長崎市なりの「抵抗」が認められない、残念な式典でした。とは言え、ヒロシマ同様に、アントニオ・グテーレス国連事務総長の挨拶を日本語で代読した国連事務次長である中満泉さんのお顔を見られたことは、幸いでした。
こんな世界状況で、やっと夏休みに入ろうとしているところで、半年ぶりの映画コラムをお届けします。8月1日に日本公開したばかりの映画「ツイスターズ(TWISTERS)」を観た報告です。なぜこの映画を観に行ったかというと・・・。1996年に「ツイスター」という映画が作られ、後期科目「アメリカの生活と文化」の教科書『スクリーンで旅するアメリカ』「オクラホマ州とアリゾナ州」の章の「『ツイスター』と『オズの魔法使』」項目で、紹介したからでした。

アメリカ中西部オクラホマ州で生まれ育った主人公の女性が、幼少期に父親が竜巻に飛ばされて亡くなる経験をしたことが契機で、「竜巻追跡者」になるという話でした。オクラホマ州とその北のカンザス州は、竜巻の「名所」です。
何しろ20世紀の話です。この項目冒頭で、大谷選手がまだ幼少期、ロサンゼルス・ドジャースで活躍していた日本人投手、野茂英雄を紹介していました。彼の振りかぶり体制が、まるで竜巻のようだったので、アメリカでは「トルネード・ノモ」と呼ばれたのでした。
その頃、日本では竜巻とは無縁の気象状況だったのに、今では、日本のあちこちで竜巻が起こっていて、地球の気象状況は、本当に不気味な状態になっています。2024年夏も、「これまでに経験したことのない高温」とか、「ゲリラ豪雨」が日常になってきています。
さて、前作から30年近く経って、地球環境が変わっていることから、新作映画「ツイスターズ」では、巨大竜巻が連発します。チラシには「巨竜に、挑め。」とあり、「地球が生んだ巨大竜巻とは?」の回答を、風速500㎞!建物は跡形もなく吹き飛び、数トンある列車や車を遙か上空まで吹き上げ雨のように降らせる怪力モンスターと・・・。

そうそう、映画の台詞に「藤田(F)スケール」が出てきました!『広辞苑』でも「竜巻やダウン・バーストの強さを示す指標。被害の状態と風速の範囲を対応させたもの」と掲載されるほど有名な日本人気象学者、藤田哲也博士、別名「竜巻博士」とか。Fスケールは1971年に、藤田博士が考案したそうで、日本人として誇るべき事実です。
ちなみに、「ダウン・バースト」を発見したのが、藤田博士!積乱雲の中の下降気流が強くなり、地面に激突し、星状に発散する現象、飛行機が墜落する原因となる気象現象「ダウンバースト」を発見したのは、日本人学者!ただし、日本での研究ではなく、シカゴ大学教授でした。ダウン・バーストを発見したのは、ウェスト・ヴァジニア州での竜巻研究中だったとか!残念ながら、日本ではなく、アメリカで研究していたから発見できたことは、間違いありません。

旧作では、竜巻観測機を「ドロシー」と名付けていましたが、新作では、検索チーム名として、「かかし」「ブリキマン」「ライオン」と出てきました。最後に、『オズの魔法使い』に関して、ほんの少し紹介して映画紹介を終わりにします。
『オズの魔法使い』(The Wizard of Oz)は、アメリカ人作家ライマン・フランク・ボームが1900年に書いた児童文学作品で、1902年にはミュージカルに、1939年にはハリウッド映画化されました。主人公ドロシーを演じたのは、子役時代のジュディ・ガーランドでした。
カンザス州に暮らすドロシーは、愛犬トトと幸せに暮らしていましたが、ある日、大きな竜巻が起こり、彼女は家ごとオズの国へ飛ばされました。家が落ちた先にいた東の魔女は、その衝撃で、つぶされて死んでしまうのですが、東の魔女は悪い魔女だったため、ドロシーは一躍、英雄になってしまうのでした。
ドロシーの願いは「カンザスの家に帰ること」で、その願いを「オズの魔法使い」なら叶えてくれるかもしれないと、北の魔女[よい魔女]に教えられ、ドロシーは、オズの魔法使いの元へ旅に出ますが、旅の途中、知恵が欲しいカカシ[scarecrow]、勇気が欲しいライオン[lion]、心が欲しいブリキの木こり[tin woodman]に出会い、一緒に旅をするのでした。
劇中歌として有名なのは、♪Over the Rainbow ですが、カンザスへ戻るおまじないでドロシーが繰り返すのは、♪There’s no place like home. でした。
オズへの旅を通して、ドロシーも、お供したカカシ、ブリキ男、ライオンも、みんな大事なものは、どこか遠いところにあるのではなく、みんな自分自身が持っているのだ、という作者のメッセージでした。
新作映画でも、主人公の女性は、竜巻のために起きた故郷での哀しい事実から逃れるために、オクラホマから離れてニューヨークで仕事をしていたけれど、結局、実家に戻ってくる、という結末となります。
♪There’s no place like home. なのです。皆さんも、ご自分の近くにある「大事なもの」をお大切になさって、よい夏をお過ごし下さいませ!!!