岩本裕子研究室

PROFESSOR HIROKO IWAMOTO'S OFFICE

映画コラム No.010 誰を待つ?アドベントの話と『天使の贈り物』#映画 #ホイットニーヒューストン #天使の贈り物 #クリスマス#アドベントカレンダー #デンゼルワシントン

Posted on 12月 23, 2024

こんにちは。岩本裕子(ひろこ)です。埼玉県にある浦和大学の教員をしております。いつもお聞きくださっている皆さま、ありがとうございます。今日が初めての方々にははじめまして!このYOUTUBEでは、さまざまな映画についてお話をしています。本日は12月今年最後のお話となりますので、クリスマスに関するお話をさせていただきます。

私の専門領域はアメリカの歴史や文化なので、キリスト教を切り離しては講義を進めることができません。たとえば、本日は「アメリカの生活と文化」という授業でアドベント(待降節)について話しました。さらに、来週が今年最後の授業となる「アメリカの生活と文化」では、「ニューヨークでクリスマスを」というテーマで講義します。

この講義では、いくつかの映画の一部分を見せながら、ニューヨークでのクリスマスを学生たちに体験してもらっています。皆さまは12月に入るとどのようにお過ごしでしょうか。大掃除や年末年始の準備でお忙しいかと思いますが、私は12月になるとヘンデル作曲のオラトリオ「メサイア」を流しています。

先日、10月にパイプオルガンの伴奏だけで演奏された「メサイア」を聞く機会がありました。また、私の前任校である東京女子大学にも「メサイア」を聴きに行きました。1988年に助手として東京女子大学で勤務を始めた際に初めて触れた「メサイア」に、最初の鑑賞からすっかり魅了されて、それ以来、毎年一度は聴かないと年を越せない気持ちになります。

私自身も「メサイア」のCDを持っていて、自宅ではずっとそれを流しています。この中でも特に有名な曲といえば「ハレルヤ」ですね。この「ハレルヤ」は、1742年にアイルランドのダブリンで初演され、翌1743年にはロンドンで公演されました。この際、時のジョージ2世が「ハレルヤ」の演奏中に立ち上がったことが知られています。そのため、現在でも多くのコンサートホールでは「ハレルヤ」が演奏されると観客が立ち上がる慣習があります。

こうした習慣は、神やイエスへの敬意を表しているといわれています。一方で、あえて立たないことをルールとするコンサートもあり、そのあり方はさまざまです。

現在はアドベントの第3週に入っていますね。アドベントという言葉を耳にしたことはありますか?アドベントはラテン語で「来る」「到来する」という意味を持っています。誰が来るのかというと、もちろんジーザス・クライスト、すなわちイエスが誕生します。この誕生を祝う降誕祭の準備期間がアドベントで、12月25日のクリスマスまでの4週間がこれに該当します。この期間は、クリスマスから逆算して4週間前の日曜日から始まります。今年はすでに第3週に入っています。

今週、東京女子大学のクリスマス礼拝に出席した際には、アドベントの2週目でロウソクが2本灯っていました。その時、同期の女性牧師さんに伺ったところ、確かに2週目だと教えていただきました。現在は3本目のロウソクが灯っている頃でしょう。

アメリカの家庭では、アドベントを過ごしながらクリスマスを迎える準備が行われます。近年では少なくなりましたが、古い映画を深夜に放送する習慣がありました。クリスマスが近づくと、必ず流される映画が3本あります。このうち2本は1990年代にリメイクされました。

まだリメイクされていない1本のタイトルは『素晴らしき哉、人生』です。原題は “It’s a Wonderful Life” で、フランク・キャプラ監督の作品です。この映画は日本語訳でも「素晴らしき哉、人生」となっていますが、日本語ではあまり「哉」という表現は使いません、木村拓哉さんの「哉」ですね。

この映画は1946年に制作されたオリジナル作品で、リメイクはされていません。一方で、リメイクされた他の2本のうちの1本は『34丁目の奇跡』です。この映画は、1947年にジョージ・シートン監督によって制作され、1994年に新しいバージョンが公開されました。感謝祭のパレードから始まる映画で、感謝祭の講義ではこのパレードのシーンを学生たちに見せています。このYOUTUBE 第7回「『34丁目の奇跡』とブラックフライデー」でもお話ししましたね。

もう1本の映画は、日本語では『天使の贈り物』というタイトルで、1996年にリメイクされました。このリメイク版ではホイットニー・ヒューストンが主演を務めました。残念ながら、最近の学生たちはホイットニー・ヒューストンをあまり知らないようで、少し悲しい気持ちになります。黒人女性史を専門領域とする私としては、彼女の存在が忘れられていくのは残念でなりません。この映画のテーマは黒人教会が舞台で、困難に直面している教会を救済するために天使が遣わされる物語です。

この映画で天使役を務めたのはデンゼル・ワシントンです。彼は今注目されている俳優で、映画『グラディエーター』にも出演しています。ところで、この映画の元々のタイトルは『牧師の妻』(The Preacher’s Wife)で、リメイク版では『天使の贈り物』に変更されました。映画の内容からすれば納得のタイトル変更ですね。

1947年に制作されたオリジナル版では、すべて白人社会を描いた物語でした。白人教会、白人の牧師、その家族が主人公という時代背景が反映されています。それが50年の時を経て、多様性が取り入れられるハリウッドの流れの中で、黒人教会や黒人キャストによる物語へと生まれ変わりました。

リメイク版の最後では、ホイットニー・ヒューストンが♪Joy to the Worldを歌います。この曲は賛美歌で、日本では「諸人こぞりて」として知られる曲です。ホイットニーは幼い頃から教会の聖歌隊で育ち、その圧倒的な歌声を披露して映画は幕を閉じます。

ホイットニーを覚えている方がいらっしゃれば、ぜひこのクリスマスに『天使の贈り物』をご覧になってみてください。今年もお聞きくださり、ありがとうございました。次回、またお耳にかかれるのを楽しみにしております。どうぞ良いお年をお迎えください。

最後にお知らせです。2025年2月8日土曜日に、ディズニーに関する講演会を行います。詳しくは浦和大学のホームページをご覧ください。お耳ではなく、直接お目にかかれるのを楽しみにしています。よろしくお願いいたします。