岩本裕子研究室

PROFESSOR HIROKO IWAMOTO'S OFFICE

映画コラム No.008ノーベル平和賞と映画『パールハーバー』 #パールハーバー #ノーベル平和賞 #日本被団協 #スティーブンセガール

Posted on 12月 5, 2024

今週土曜日、12月7日(日本では12月8日と捉えられます)、1941年に日本が真珠湾を攻撃しました。この出来事を受け、翌日、当時のアメリカ大統領フランクリン・デラノ・ローズベルトが、議会に対し参戦を提案しました。アメリカでは、大統領が戦争を宣言する権限を持つわけではなく、議会に提案し、議員の賛成を得て初めて参戦が決まる仕組みです。その際、連邦議員の中で反対票を投じたのはたった一人だけで、その他の全議員が賛成票を投じました。

1941年12月8日、アメリカ合衆国は第2次世界大戦に正式に参戦することになります。その後、戦争は太平洋を舞台に展開され、「太平洋戦争」とも呼ばれるようになります。本日のYoutube第8回のテーマは「パールハーバー」としましたが、12月10日にはノルウェーのオスロでノーベル平和賞の授賞式が行われますね。

平和賞以外のノーベル賞授賞式はスウェーデンのストックホルムで開催されますが、平和賞だけはノルウェーのオスロで行われます。今年は、平和賞以外の分野では日本がほとんど関係しなかったため、これまで大きく取り上げられることも少なかったのですが、今回は、日本の「ヒダンキョウ HIDANKYO(日本原水爆被爆者団体協議会)」が平和賞を受賞したので、日本ではこれから多くのニュースが報じられることでしょう。

どうして「パールハーバー」の話をしているのに、突然「ヒダンキョウ HIDANKYO」の話になったのか、不思議に思われるかもしれませんが、これには深い関連があり、表裏一体の関係なのです。1941年12月7日の真珠湾攻撃をきっかけに、アメリカ合衆国は日本に勝利することを目標に戦争を本格的に展開し、ドイツやイタリアが降伏した1945年5月以降は、日本が唯一の標的となりました。

そのような中、まだ開発途中であった原子爆弾が完成に近づいていました。映画『オッペンハイマー』を観た際に知ったのですが、最初の核実験は当初7月15日に予定されていたものの、豪雨のため翌日の16日に延期されました。その日、ニューメキシコ州アラモゴードで人類史上初めてのきのこ雲が上がり、その翌月、8月6日にHIROSHIMA、9日にNAGASAKIに原子爆弾が投下されました。

広島にはウラン爆弾、長崎にはアラモゴードと同じプルトニウム爆弾が使用されました。この2種類の爆弾をそれぞれ使用する必要がアメリカ側にはありました。こうした核兵器の悲劇が、日本における原水爆反対運動の基盤を築くことになりました。

その象徴ともいえる「ヒダンキョウ HIDANKYO(日本原水爆被爆者団体協議会)」が、今回ノーベル平和賞を受賞することとなりました。本日私が講義で取り上げた「パールハーバー」と「ヒダンキョウ HIDANKYOのノーベル平和賞受賞」というテーマは、歴史的背景を考えると切り離せない、表裏一体の関係にあるのです。

アメリカ側の立場としては、「パールハーバーがあったからこそ、Remember Pearl Harbor」「Remember December 7」というスローガンのもとに戦争を展開しました。1945年8月6日と9日という日を迎えるに至ったわけですが、これは日本にとって非常に苦しい歴史でもあります。一方、ノーベル平和賞の性質として、過去の成果に対して授与するというよりも、未来への期待を込めて授与されることが多いのも特徴です。

たとえば、オバマ大統領はヨーロッパで「核のない世界」に言及しただけで、ノーベル平和賞を受賞しました。ところが、その後8年間の在職期間において、核兵器廃絶に向けた大きな進展はありませんでした。広島を訪れたのも任期最後になってからで、それ以上の成果を残すことはありませんでした。一方で、ウクライナやガザ地区など、世界各地で紛争が続いていて、原爆を再び使用しようとする考えを持つ「やから」が存在しているのも事実です。これは非常に恐ろしい現実です。

12月7日(アメリカ時間)、または12月8日(日本時間)を迎える中で、ノルウェーのオスロで12月10日に行われる日本被団協へのノーベル平和賞授賞式を、皆さんぜひ心のどこかに留めておいてください。このYouTubeを後になって、何年も経ってからご覧いただく方もいらっしゃるかもしれません。その時には、私がお伝えしたことをぜひご自身の頭で考えてみていただければ幸いです。

先ほど、「アメリカの生活と文化」という講義で、私が持っている「パールハーバー」という名前を付けた教材用の袋の中から、ある一面広告を見つけました。その広告を学生たちに見せて、「この意味がわかる?」と問いかけたのですが、ある出版社が新聞の両面を使って広告を出しており、私が持っているのは『朝日新聞』です。

その広告の日付は2017年1月5日です。広告の両面の左側には、真珠湾攻撃を象徴する零戦の爆撃機の写真が掲載され、「1941年12月8日 真珠湾」と書かれています。さらに右側には、「1945年8月6日 広島」と記され、きのこ雲の写真が掲載されています。その広告に記された出版社のメッセージは次の通りです。

忘却は罪である。人間は過ちを犯す。

しかし、学ぶことができる。

世界平和は人間の宿題である。

この広告を見つけた2017年1月5日、すぐに「パールハーバー」教材袋に入れました。毎年この時期に必ず行う「パールハーバー」の話題とともに、学生たちに見せる教材の一つとして、この広告を見せています。

前期の授業には「歴史入門」や「外国史概説」といった科目がありますが、その最終講義では「マンハッタン計画」をテーマにします。なぜアメリカ合衆国が広島と長崎に原子爆弾を投下したのかについて考えるためです。今年は映画『オッペンハイマー』が公開され、話題になりました。冬休み中には某有料チャンネルでも配信されるようです。

皆さんの身近で起こる出来事は、遠く離れた場所での戦争とは無関係と思われがちですが、実際には足元の問題と繋がっているのです。今回の講義で取り上げた「パールハーバー」というテーマが、皆さんのお耳、頭、さらに心に少しでも届くことを願い、第8回を閉じたいと思います。

映画コラムはもともと、文章の形で公開されているので、皆さんに読んでいただくことができます。これまでに20回以上アップしていますが、第4回では「年始に考えるポピュリズムと向き合うためにできること」をテーマにし、映画『パールハーバー』を取り上げました。本日の講義では、映画の真珠湾攻撃部分を約13分間に編集した映像を用いて、学生たちに見せました。

『パールハーバー』の前には『沈黙の戦艦』という映画も見せました。これは20世紀に制作された映画で、当時のジョージ・H・W・ブッシュ(父親)大統領が、戦艦ミズーリ号の甲板で行われた「真珠湾攻撃50周年記念式典」でスピーチを行う実際の映像が使われています。その冒頭部分を含めて学生たちに見せました。

冬休みになりましたら、ぜひ『パールハーバー』や『沈黙の戦艦』といった映画を観ていただき、そこから考えを深めていただけると嬉しいです。どこかで時間を見つけて、これらの作品を心に留めていただければ幸いです。

本日もお聞き下さり、ありがとうございました。これで「岩本裕子研究室 映画コラム ON YOUTUBE」第8回を終了いたします。また次回、お耳にかかれることを楽しみにしていります。ありがとうございました。