岩本裕子研究室

PROFESSOR HIROKO IWAMOTO'S OFFICE

映画コラム On YouTube No.005 「ハロウィンと銃社会」講義のこぼれ話 #extraterrestrial #perfectworld #halloween

Posted on 10月 22, 2024

「ハッピーハロウィン」という言葉を、周りで耳にしたことはありますか?何が「ハッピー」なのでしょうね。ハロウィンが何か、ご存知ですか?今ではもう、知らない人がいないほど、デパートの隅々までカボチャ色、オレンジ色に染まっていますよね。皆さん、ハロウィンについて理解していらっしゃいますか?

私は大学で「アメリカの生活と文化」という科目を教えていますが、10月31日のハロウィンが近づく講義では、必ずハロウィンに関する正しい知識を学生たちに伝えています。先ほどもお話しした通り、10月31日がハロウィンの日です。そして、その翌日の11月1日が、実は新しい年の始まりなのです。

前回、第4回目で暦について詳しくお話ししましたが、11月1日から1年が始まるのは、古代ケルト人たちの暦です。現在のアイルランド周辺に住んでいた人々が使っていたものでした。そして、ヨーロッパの先住民とされるケルト人たちにとって馴染み深い「アーサー王伝説」をご存知でしょうか?

実は、アーサー王という実在の王様はいなかったのです。あの地域にいた立派な王様たちの良いところを集め、アーサー王という偶像を作り上げ、それがケルトの人々の誇りとなりました。このようにして中世に広がったアーサー王物語につながっているのですが、その前の古代ケルトの暦では、11月1日が新年の始まりでした。

では、10月31日はどのような日だったのでしょうか。日本でいう大晦日にあたります。大晦日の夜、日本のように紅白歌合戦を見たり、親戚が集まったりするわけではなく、古代ケルトの人たちは何をしていたのでしょうか。10月31日は、日本でいうとご先祖様が三途の川の向こうから帰ってくる日とされていました。

「それってお盆じゃない?」と思った方、その通りです。日本で言うお盆です。お盆の迎え火や、お彼岸のようにお墓参りをする、日本の習慣に似たことをケルトの人々は10月31日に行っていました。帰ってくるご先祖様を無事に家へ迎えるため、間違わずに帰ってきてもらえるように、窓際に提灯を吊るしていたのです。

その提灯は、電気のない時代ですから、大きなカボチャに穴をあけ、目、鼻、口を作り、中にろうそくを立てたものでした。こうしてカボチャの提灯を作り、外から見えるように置いておくと、帰ってくるご先祖様が「あれが我が家だ」とわかって戻ってきてくれる、それがカボチャの提灯の役目だったのです。

その提灯には名前がありました。女性の名前ではなく、男性の名前で、日本で言う「太郎」のようなものです。英語で「ジャック・オー・ランタン」、つまり「ジャックの提灯」という意味です。10月31日、大晦日にこの提灯の下にご先祖様が帰ってくるのです。

こうしたことから、ハロウィンの夜には家の外に幽霊がたくさんいるということになります。幽霊がたくさんいるので、あまり外をうろついていると、あの世に連れて行かれるかもしれません。そこで、子どもたちは仮装して幽霊に紛れ込む、これが仮装の由来なのです。

仮装パーティーがハロウィンのメインイベントだと思っている方もいるかもしれませんが、実は違います。子どもたちは仮装して、日が暮れてから近所を回り、「トリック・オア・トリート!」と言いながらお菓子をもらいます。「いたずらをされたくなければお菓子をちょうだい」という意味です。これを日本人は「トリック・オア・トリート」とカタカナで表現しますが、ぜひ英語で発音してみてくださいね。

ただ、この日に実はとても悲しい事件がありました。日本でも知っている方が多いのですが、もうかなり昔のことです。21世紀になった今では、さらに遠い過去の話に感じるかもしれません。

1992年10月、アメリカの高校に留学していた、とても優秀な日本人の高校生が射殺されました。その事件だけでも心が痛むのに、犯人が無罪とされたのです。「GUILTY(有罪)」ではない、つまり無罪とされたのです。なぜそのような判決が出たのか、私の講義ではハロウィンの話と合わせてこの事件についても触れています。彼は服部君という名前ですが、なぜ彼を殺した犯人が無罪になったのか、それはアメリカが銃社会であるためだと説明しています。

私たち日本人は、服部君が悪かったわけではないと思っていますが、アメリカでは、自分が危険を感じたとき、自分を守るために相手を攻撃しても許される、いわゆる正当防衛、自己防衛が認められています。アメリカ合衆国は憲法が制定された際、ほぼ同時に修正条項が追加されました。この修正条項の中にある、合衆国憲法修正第2条が存在する限り、「自分を守るためだった」と言えば、たとえ相手を殺しても無罪となるのです。

服部君のご両親は「こんなことはおかしい」と行動を起こしましたが、残念ながら銃社会の問題は解決に至っていません。この事件が起きたのはもう30年以上前で、日本では忘れられているかもしれませんが、どうか記憶に留めてください。

ハロウィンが来ると、仮装パーティーのことばかり考えず、古代ケルトの暦では11月1日から始まる新年のこと、そしてこの悲しい事件のことも、どうか覚えていてください。岩本裕子研究室では映画コラムも作っていますので、最後に映画の紹介をして締めたいと思います。

まず『ET』ですね。見たことがない人はほとんどいないでしょうが、あれはハロウィンの夜が舞台です。ハロウィンの夜、男の子が異星人を自転車のかごに乗せて飛ぶシーンがとても印象的です。

あのシーンは、スピルバーグ監督のプロダクションのトレードマークにもなっています。そしてもう一つ、『パーフェクトワールド』という映画を紹介します。これは銃社会の問題に絡めてお話ししています。

詳しい内容はぜひ映画をご覧ください。映画の中では11月1日を過ぎた話が展開されていて、「10月31日はもう過ぎているじゃないか」「もうハロウィンの行事なんてできない」といったセリフも登場します。また、「ハロウィンのお菓子を出してくれ」というセリフもあったりして、非常に興味深いです。

『パーフェクトワールド』は、とても心に響く作品です。ぜひ、皆さんのハロウィン映画のリストに加えてください。本日もお聴きいただき、ありがとうございました。

またお耳にかかれることを楽しみにしています。