【総合福祉学部】障がい学生の活躍 川畑賢司さん

香川先生の受け持つ授業に「障がい児療育論」という授業があります。先日、この授業で難聴を持つ川畑賢司さんという学生が、ろう児の学びと育ちについて、自身の経験に基づいたお話してくれました。 そして授業の後、情報保障と彼の将来について言葉を寄せてくれたので、ここで紹介させていただきます。

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川畑 賢司 総合福祉学部・総合福祉学科2009年3月卒業予定 出身校:上尾東高等学校(2008年春に統廃合により、廃校)

情報保障とは

皆さんは「情報保障」という言葉を聞いたことはありますか。情報保障とは、人間の「知る権利」の一つです。例えば、視覚や聴覚に何らかの障がいがあるとします。視覚障がいの場合、目から入るはずの情報が入らなくなります。聴覚障がいの場合、耳から入るはずの情報が入らなくなります。それを代替手段によって伝える方法を情報保障と言います。

私は聴覚障がい児として生まれ、身体障害者手帳4級(当時)を交付されました。当時は手話が禁止であったため、発音訓練により言葉を獲得し、地元の小中高等学校を卒業しました。その頃の私は、情報保障という言葉は全く知りませんでした。2005年春、浦和大学に入学した私はこれまでの経験から、情報保障は心配ないと思い、授業を受けてきました。しかし、これまでに受けてきた環境とは違い、大きな部屋で授業を受けなければならない科目もあり、内容に追いつくのに必死でした。一回目か二回目の授業で、このままでは追い付けないと感じ、科目担当者と相談しました。当面は授業のスピードをゆっくり進める形で様子を見ました。

ある日、講師側からカリキュラムの通りに進まなくなる、という話があり、講師側が学内のボランティアを用意してくれました。このボランティアこそ、情報保障の一つ、ノートテイクでした。「ノートテイク」という言葉もこの時に初めて知りました。ボランティアをして下さったのは、先輩の3名でした。このノートテイクを利用し、前期は1科目だけ、後期は依頼しませんでした。翌年の春になる前に、学校側でも障がいのある学生のための委員会が設立され、改めて情報保障についての対応が始められました。これによって、2年と3年の間はノートテイクを活用しながら、授業を受けました。

決意

ところで、浦和大学では3年次に約1か月間、現場実習(福祉施設や相談機関などで実際に社会福祉援助技術を学ぶ)があります。私は2年の時、学内で行われた特別講演に出席し、ある光景を見て、そこの施設へ行こうと決意したのです。その光景というのは、視覚と聴覚に障がいを持った女性(盲ろう者と言います)が講演をしていたのです。実習をするための書類を作成し、暫くして実習の許可が下りました。

実習先は、ろう重複(聴覚をベースに、その他の障がいを併せ持つ)を専門とした施設であり、聴こえないことが当たり前という環境の中で実習を行いました。当初はできなかった手話も、実習の間に力がついてしまい、自分でもびっくりしました。また、聴覚障がいのある職員も働いていたため、情報保障は当たり前になっており、聴こえる職員が通訳をしていました。充実した1か月の実習が終わった後、施設長から声を掛けられ、非常勤として働くことになりました。特に3年次の後期は学校と職場を往復する忙しい時期でした。

ところが、2008年に入ってから、止まらぬ耳鳴りと疲れが見られるようになりました。病院で受診の結果、メニエール病か突発性難聴のどちらかであると診断されました。勤務日を減らし、しばらく通院して様子を見ましたが、回復の見込みはなくなり、身体障害者手帳3級が再交付されました。

それを知った他の職員がろう学校のボランティアを紹介してくれました。私は普通の学校で育ったため、ろう学校の経験はありません(イベントなどに参加するぐらいでしたが)。2月に初めて参加し、改めて情報保障の実際を身近に体験しました。子供、保護者、先生、ボランティアのみんなが手話を使って会話をしていました。その後、私はスタッフとなり、2009年に入った今でも活動しています。

“ここ”から、自分の未来を切り拓いていく――。

2008年夏の前、私はろう学校の教員になろう、と決心しました。きっかけとなったのは、栃木県のあるフォーラムに参加した際、ある人物から言われた言葉でした。その言葉とは、『他の聴覚障害者が就いてない仕事を開拓すること』でした。すでにろう学校では、何人かのろう教員がいますが、まだまだ足りていない現状です。慌ただしい8月の中、大学院の試験を受け、その1ヶ月後、合格を果たしました。本来なら、小学校免許等を有していなければなりませんが、それを取得するためのコースがあり、併せて受験した結果、合格となりました。

社会福祉士受験資格を得るための大学4年間の努力が水の泡ではないかと思われますが、そうではありません。私にとってこの4年間は、自分を見直すいい機会となりました。社会福祉士の資格を取得する場というイメージがありがちですが、大学とは実際には人との関わりの中で心もともに成長する場であると感じています。『ただ学校に通う』のではなく、ボランティア等を通じて、様々な障がいを持った方たちと出会い、交流を深めて心身とともに成長してほしいと感じています。

施設の非常勤となって1年半近くになりますが、学校では学べない障がいや病気について深く知ることができ、同時に情報保障の大切さについて改めて実感させられる日々です。春から大学院入学を予定していますが、大学で養った知識と施設での経験を生かして、素晴らしい教師を目指していきたいと思います。

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