2015年度 第5回読書感想文コンクール講評

その他

2015年10月29日
浦和大学第5回読書感想文コンクール(中学校・高等学校部門)図書・紀要委員会による講評
  • 最優秀賞:中学2年 ガオ・カレン 現実と夢の境界線―『不思議の国のアリス』

    幼少時から読んできた『不思議の国のアリス』が、小林泰三のミステリー『アリス殺し』を読むことにより、夢(不思議の国)と現実(地球)の境界線をさまよう「恐怖」となったという。今はもう読みたくないと思う『不思議の国のアリス』を、大人になってから再び読んだらどのように思うかが楽しみだ、という発想は見事だった。

    優秀賞:高校2年 高松 千晴 「死」を知り成長する―『夏の庭 The friends』

    高校生として、何気なく手に取った本だと思うが、「死」というテーマについて最後まで投げ出さず読み切り、自分の正直な思いがつづられていた。できれば、ここからどのような「生」を自分は望むのかにも言及してほしかった。

    佳作:中学3年 水野 初音 『明日の子供たち』

    児童養護施設の子どもたちに向ける世間からの同情の目に、子供たち自身が嫌な思いをしていることを知ったという。施設の子供たちが複雑な事情を持ち、自らの心を開かずに成長したことを哀れだと報道するテレビ番組に対して、施設への偏見だと苦言も呈している。この本を読んだことで、自分ができることは何かと自らに問いかけて、彼らに関してさらに知識を深め、多くの人に伝えていくことだという結論に好感がもてた。

浦和大学第5回読書感想文コンクール(大学部門)図書・紀要委員会による講評
  • 最優秀賞:総合福祉学部4年 関 幸一 『シラノ・ド・ベルジュラック』

    新国劇の島田正吾が一人芝居として演じた著名なこの作品を、ソーシャルワークという視点から論じ、作品のポイントを抑えた上で、なお同時代のフランスの歴史的な観点にまで言及し、読書感想文として完成の域に達している。感想文最後の一文「シラノのように慎み深くも粋な心意気をもつ人間こそ、今も昔も、そしてこれからも、慕われ続けていくのでしょう」に、人間の本当の愛が描かれているように思う。

    優秀賞:短期大学部介護福祉科1年 井福 瑠奈 『できればムカつかずに生きたい』

    印象的な冒頭の引用文から始まって、田中ランディの文章から自分の生き方を賢明に問いただし、生きるよすがを見つけようという姿勢に共感を覚えた。この本によって、前向きに生きる術を知り、大きな喜びと希望を持って生きていこうとする姿に感動した。

    佳作:こども学部3年 大久保 萌 『海くんがわらった-超重度障害児と家族の6年間』

    2年次の施設実習を通して、従来自ら持ってきた偏見を払拭できたことで、この本に出会うことができたと正直に語る。この本を読んだことで、障害を持つ方やその家族と、もっと関わっていきたい、こういう家族の経験を伝えていきたい、という学びは頼もしい。