模擬授業レポート『深層心理学 「わたしたちの中の“こども”と生きるチカラ」~アニメ「風の谷のナウシカ」の考察をとおして〜』(講師 柴田崇浩)

こども学部

2023年8月15日
  • 2023年7月23日のオープンキャンパスでは、模擬授業『深層心理学 「わたしたちの中の“こども”と生きるチカラ」~アニメ「風の谷のナウシカ」の考察をとおして〜』(講師 柴田崇浩)が行われました。

  • わたしたちの心の中には無意識の「こども」の心があり、思考や感情、行動に大きな影響を与えています。

    この「こども」の心は、原体験や原風景によって形作られている側面があります。原体験とは、幼少期に経験した出来事や感情で、私たちの性格や価値観等に大きな影響を与えています。原風景とは、原体験を想起させるイメージや場所で、時に心の癒しや安らぎを与えてくれ、時に辛い体験やトラウマの象徴となるものです。

    アニメ「風の谷のナウシカ」の物語では、主人公「ナウシカ」が、大人たちによってオームの幼生と引き離された、幼い頃の原体験が描写されています。その体験は、幼いナウシカにとっては、大人も、オームも、すべてが愛情の対象であったのに、それらが共に相容れないという、世界の大きな矛盾に直面した象徴的な出来事であったと言えるでしょう。

  • このナウシカの原体験は、映画の中で“フラッシュバック” (夢)として想起されますが、それは、ナウシカがなぜムシと自然(腐海)、人間が共存すべきであるかという理由を説得力ある形で示しているといえるでしょう。そのように原体験の描写をとおして、ナウシカが自らの生命と人生を賭して、共存のための闘いを続けるという物語の主軸が視えてくるのです。

    ナウシカの物語の例のように、人の原体験や原風景は、時に辛く悲しいことやトラウマも含まれますが、わたしたち自身の生命と生きるチカラを支える根源的な心理作用にも繋がる性質のものであることを、授業を通して理解していきました。

    余談ですが、原体験・原体験を深く理解することは、現在上映中の「君たちはどういきるか」の難解な物語を紐解くうえで役に立つかもしれませんね。

    模擬授業では、一方で、わたしたちの原体験や原風景のチカラが、現代の心理社会的課題によって危機に直面していることについても警鐘がなされました。現代の心理社会的課題については、入学後に授業に参加して深く理解してみましょう。