町に届いたこども議会の声 酒々井の中3が清掃活動を実現

宮坂奈津
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 千葉県酒々井町のこども模擬議会で、中学3年生の議員が提案した清掃活動が町の同意を得て実施された。識者は「提案の実現の可否を見せることで、子どもたちの政治や役所に対する期待や関心が高まり、主権者意識を育むきっかけになる」と話している。

 同町内で7日、酒々井中学校の3年生が清掃活動をし、JR酒々井駅前では、約30人が草むらや道路に落ちている空き缶やマスクなどのゴミを拾った。ゴミ袋やゴミ拾い用のトングは町が提供した。

 この清掃活動は「酒々井町Clean・Green運動」。昨年10月に町役場の議場で開かれた模擬議会で、同校の本城佑太朗さんが学年を代表して提案した。町から実現可能性を示唆する答弁を引き出し、模擬議会後に町長に正式に計画書を提出。すると町は活動に賛同し、環境整備などを担当する経済環境課が所有するゴミ袋500枚の提供とトングの貸し出しを認め、提案が実現した。清掃終了後、本城さんは「模擬議会での提案を通して、町のことをより考えるようになった」と話した。

 同町では2006年から模擬議会が開かれ、過去にも町がこども議員からの提案を採り入れるなどして、実現させた事例が複数あるという。

 こうした取り組みは、町選挙管理委員会と学校、教育委員会の連携がとれていると評価され、総務省の主権者教育の広報資料に採用されるなどした。

 早稲田大学卯月(うづき)盛夫研究室・NPO法人わかもののまちが実施した18年の調査によると、全国で子ども模擬議会に取り組んでいる、または過去に実施した経験があるのは回答した1196自治体のうち約6割だった。議会を設置した自治体は、ほとんどがこども議員からの提案を受ける形式をとっていたが、「できるだけ提案を実現する」と回答したのは、うち約2割に過ぎなかった。

 こども家庭庁の調査(22年度)によると、子どもが国や自治体に意見を伝えたいと思わない一番の理由は「伝えても反映されないと思うから」(約43%)だった。主権者教育に詳しい浦和大学の林大介准教授(政治学)は「たとえ実現しなくても、できない理由を示されれば『聞いてはくれる』と思える。大人の聴く力が試されている」と指摘する。

 清掃活動の議案を一緒に考えた田中優里奈さんは「提案が通ると思っていなかったのでびっくり。町のために働けてうれしい」と振り返った。

 酒々井町経済環境課の担当者は「町内をきれいにしたいという思いに賛同した。来年度以降も清掃活動を続けてもらえれば」と話している。(宮坂奈津)

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酒々井町でこども議員の提案を採り入れた主な事例

・「狭い通学路で車とすれ違うときに怖い思いをする」

→通学路を色つきの舗装で車道と分離

・「図書館でインターネットを利用して本を借りられるようにしてほしい」

→町立図書館にインターネット貸し出し予約システムを導入

・「地球環境のため学校の屋上に太陽光パネルを設置してはどうか」

→町内の全小中学校に太陽光発電設備を設置

・「町の魅力を高めるために駅前にベンチを置くのはどうか」

→JR酒々井駅前2カ所にベンチを設置

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