本学学生の学修状況(2023年度)について

浦和大学IR委員会

はじめに

本学学生の学修状況(学修時間及び学修行動の実態)について、IR委員会は、2年ごと(2014年度、2016年度、2018年度)にアンケート調査を実施し、その結果を公表してきた。しかし2020年度は、コロナ禍のため対面での調査ができなかった。そこで前回(2021年度)は、学生がオンラインを使ったコミュニケーションに慣れたことを利用して、グーグルフォームでのアンケート調査を実施し、その結果を公表した。今回(2023年度)も前回と同様の調査方法であったが、コロナ後の最初の調査である。本学学生の学修状況はコロナ以前に戻ったのか、あるいはコロナ以降の変化が定着したのか、結果が出たので報告する。

調査の実施概要

今回の調査の実施概要は、以下の通りであった。

  1. 期 間:2023年12月11日~12月22日の2週間。
  2. 対 象:本学の全学部・全学年の学生。
  3. 方 法:グルーフォームを使った無記名式アンケート。
  4. 内 容:学修時間及び学修行動の実態。
  5. 回収数:131名の回答(前回は114名)。

質問と回答(1)

質問はこれまでと同じで全部で14問であった。内容は大きく「授業と密接な学修」に関する質問(問1~問9)と「それ以外の学修」に関する質問(問10~問14)に分かれる。まず、「授業と密接な学修」に関して、質問と回答を見ていく。

問1.あなたは1週間に何コマの授業を受けていますか。

これは最も基本的な学修時間である授業時間についての質問である。回答の半数以上が週12コマ以上と回答している。これまでも本学学生は授業を受けることに積極的な姿勢をもっていたが、コロナ以降、受講科目数は増えている。

問2.受けている授業への出席率は平均すると何%くらいですか。

授業を受けるといっても、出席率が低いと問題である。それゆえ、これはいわば問1の充実度を問う質問である。90%近い学生が80%以上の出席率と回答している。本学は出席管理に厳しいとはいえ、また回答者は真面目な学生が多いとはいえ、今回も出席率は極めて高い。

問3.授業を欠席する主な理由は何ですか。

この質問はもともと欠席の原因を探り、それを解消して出席率を高めようと意図したものである。今回多かったのは「その他」であるが、これは家庭や通学の諸事情ではないかと推測される。もちろん今回も「朝寝坊」という回答が多く、半数近くあった。これは青春期に特有の生活習慣に根差すものであって、変えるのは難しいかも知れない。

問4.あなたは受けている授業科目のシラバスを読んでいますか。

シラバスは授業の目標や計画を示したものであり、予習・復習のガイドになるものである。これを読んでおくことは授業を受ける前提となる。ところが、今回も50%以上の学生が「半分程度読んでいる」から「ほとんど読んでいない」をマークしている。まだまだ学生に対しシラバスの重要性を強調する必要があるといえる。

問5.指定された教科書がある場合、教科書を読んでいますか。

教科書を読むことが予習・復習の基本であり、授業の理解を高めるものであることは言うまでもない。以前から「すべて読んでいる」と「だいたい読んでいる」をマークした学生は合せて40%程度であったが、今回も同程度である。前回はオンライン授業で教科書を読む必要性が大きくなったせいか、数字は65%程度もあったが、元に戻ってきたようである。

問6.先生の指定する参考書や参考文献を読んでいますか。

これは前問とほぼ同じ質問であるが、ここでも数字は戻っている。前回は、オンライン授業なので参考文献を読む必要性を感じたのであろう、「すべて読んでいる」と「だいたい読んでいる」をマークした学生は半数以上あったが、今回は以前と同様30%に満たなかった。

〇小括:以上の回答結果をまとめると、本学学生はコロナ前よりも「授業にはよく出ている」とはいえるが、前よりも「授業の理解を深める努力をするようになった」とはいえない。

 
問7.授業の予習・復習をしていますか。

この質問の回答は上記の小括を裏づけるものである。すなわち、前回より「ほとんどの科目で予習・復習をしている」と「だいたいの科目で予習・復習をしている」をマークした学生は合わせて5%程度減っており、逆に「あまり予習・復習をしていない」と「ほとんどの科目で予習・復習をしていない」と回答した学生が15%程度増えている。前回は先生の話を聞くだけでなく「理解する努力もしている」といえたが、今回は以前のように、本学学生の多くは「授業に出て、先生の話を聞いて、済み」に戻ったようである。

問8.授業で出される課題(レポート作成や宿題など)で調べ物をする時、主な情報源として何を利用していますか。

これは最近の学生の勉強方法を尋ねる質問である。最初の調査では50%程度の学生が「インターネットの情報」を挙げていたが、この割合は次第に増加傾向にあった。今回も80%以上の学生が「インタイーネットの情報」を挙げている。課題を仕上げるのに、図書館で文献を探すという方法は、インターネットで情報を検索するという方法に、確実に取って代わられている。

問9.あなたはこれまでにオフィスアワー(指定された時間に先生の研究室を訪ねること)を何回くらい利用しましたか。

授業でよく分からないと思った時や授業の内容をもっと勉強したいと思った時、オフィスアワーを利用することは効果的である。しかし、徐々に改善しているとはいえ、今回も70%程度の学生がオフィスアワーの利用は「1~2回」ないし「ゼロ回」と回答している。ただ、本学は教員に学生への個人面談を義務付けているので、これは教員の研究室を訪ねていないということではない。それにしても、コロナ後も、授業について質問に行かないという傾向は続いているといえる。

問10.オフィスアワーを利用しない主な理由は何ですか。

これもオフィスアワーを利用しない原因を探り、その解消によってオフィスアワーの利用を促そうという意図をもった質問である。今回も50%程度の学生が「オフィスアワーをよく知らないので」と回答していて、圧倒的に多い割合である。高校にオフィスアワーがないせいかも知れないが、オフィスアワーのことを今後一層説明するか、あるいはインターネットなどを使った質問時間に変えるか、いずれにせよ改善が必要な数字である。

質問と回答(2)

次に、調査の後半部分、つまり「授業以外の学修」に関して、質問と回答を報告する。

問11.あなたは授業時間とは別に、平均して1週間に何時間くらい授業(単位取得)に直接関係する勉強(授業の予習・復習やレポート・宿題の作成など)をしていますか。

今回「ほとんどしない」と回答した学生は30%程度で、前回より20%程度増加している。逆に「3~5時間」ないし「5~7時間」と回答した学生は30%程度で、30%ほど減っている。従来多くの学生は1日1時間も勉強していなかったが、今回も同じになった。前回は多くの学生が1日1時間は勉強しており、コロナ禍の良効果というべき数字だったが、これを習慣として根付かせることは難しかったことになる。

問12.学期末試験の時、1科目当たり平均何時間くらい勉強する予定ですか。

今回は40%程度が「2時間ないし3時間程度」と回答しており、15%程度が「4時間ないし5時間以上」と答えている。数字は前回よりも10%~15%ほど落ちており、ここでも勉強する熱意が、コロナ禍の中より低下していることが分かる。

問13.あなたは平均して1週間に何時間くらい自主的な勉強(授業(単位取得)に直接関係しない・しなくなった勉強で、授業で興味を持つようになった勉強や資格・就職のための受験勉強など)をしていますか。

これまで通り85%程度の学生が「1~2時間程度」ないし「ほとんどしない」と回答している。しかし、これもこれまでと同様、「7~8時間」以上と回答した学生が10%程度いる。少数であるが、目的意識を持って学修している学生は、コロナ禍の影響を受けずに、確かにいるのである。

問14.授業時間以外はどこで勉強していますか。

50%程度が「自分の家」や「自分の部屋」と回答しており、前回より10%程度減っている。逆に「大学の図書館」や「大学の自習室」は20%程度で若干増えている。従来の回答と比べると、大学は授業を受ける場で、自分で勉強する場ではない、というコロナ禍で加速した傾向に、ある程度の歯止めがかかったようである。

問15.最後にあなたの学部と学年を教えてください。

これは補足質問である。こども学部の1年生の回答がやや多いが、それでも全学部・全学年から回答がなされている。オンラインでのアンケート調査としては、成功していると評価していいだろう。

2023学修アンケート結果報告(パワーポイント資料)

まとめと提言

(1)今回の学修状況の調査結果をみると、概ねこう言えるであろう。
  1. 本学学生は従来通り授業を受けることに熱心であり、単位取得にも熱意を持っている。
  2. しかし、シラバスはあまり読まないし、オフィスアワーもほとんど利用しない。
  3. また、教科書・参考書はあまり読まないし、予習・復習もあまりしない。
  4. したがって、「単位取得のための最低限の勉強はするが、それ以上はやらない」という従来の傾向は、コロナ禍の中で改善されていたものの、また元に戻っている。
(2)当面の提言
  1. 学修する態度の涵養というのは、いわば勉強の習慣づけであり、一朝一夕にはできない。しかし、そうだからといって、努力をあきらめては教育の放棄につながる。前回より悪化した数字を反省材料に、教員は学修習慣の定着化に努力を続けていくほかない。
  2. その際、コロナ禍で試行されていた学修機会、つまり情報通信技術を利用した学修を勧める、課題を与えて能動的な学修を奨励する、等々によって、コロナ後の新たな「学修態度の涵養」に努めることが重要である。