【2011年度 第1回読書感想文コンクール】最優秀賞『神様のカルテ』を読んで

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2011年10月29日
『神様のカルテ』を読んで
短期大学部介護福祉科1年 伊達由香里
  • この本は24時間、365日を医療に捧げようとする人を描いた物語です。映画化が決まった本で、最初はどんな話か気になって読んでみたのですが今の自分に為になる本でした。

    主人公の名前は栗原一止と言い、周りからはイチさんと呼ばれています。夏目漱石が大好きで、普段から難しい顔をしている真面目な青年です。病院は、病気を治す場所でもありますが人を看取る場所でもあります。イチさんは29歳ですが、非常に多くの患者を看取ってきました。その中でも安雲さんというおばあさんの話が印象に残っているので紹介します。

    安雲さんは90歳で末期の癌に冒されています。90歳ということもあり、日に日に衰弱していきます。自分が死ぬとわかっているとき、人は絶望すると思っていたのですが、安雲さんはいつも穏やかでした。

    そんなある日、イチさんは安雲さんに1つの約束を交わしました。

    「私が死んだときは、昼間いつもかぶっている帽子をかぶらせて見送ってください。」

    その約束の数日後に安雲さんは天国へ旅立ちました。イチさんは安雲さんの枕元の棚から愛用していた帽子を取り出したとき、1枚の手紙が落ちてきました。

    「先生がこの手紙を読んでいるということは、私との約束を覚えてくれたということですね。この帽子は亡くなった主人の形見なんです。かぶっていけてよかったです。先生の一止という名前はいちに止まる、つまり正しいと書くのですね。先生の医療は、私にとっていつも正しいものでした。」

    実は、安雲さんが危篤状態になったとき、イチさんは延命治療を行わなかったのです。安雲さんが生前、延命治療を拒否していたのが理由だったのですが、イチさんの薬の副作用で苦しむよりもう楽にさせたいという気持ちもあり、この行動が正しかったのか強く悩んでいたイチさんはやっと許されたのだと思い、泣き崩れてしまいます。今まで多くの患者を看取ってきましたが、初めての涙でした。イチさんは私は医者だからいちいち泣いてなどいられない。と泣いた後に言いました。この言葉は、医療の世界の厳しさを表していると思いました。病院では毎日のように人が亡くなっていきます。しかし、人の死になれている人なんていないと思います。

    この本は医療だけではなく福祉の世界でも同じことが言えると思いました。私もイチさんのように1人ひとりの患者と真剣に向き合える人になりたいと思いました。