福祉の魅力「福祉の現場は、施設だけではない」宮寺由佳(准教授)

浦和大学では、多様化する社会問題に応える人材育成に力を注いでいる。地域との連携による福祉活動もその一環だ。「地域や社会をもっと身近に感じ、何が問題かを自分なりに考え、解決に向けて行動を起こしていく大人になってほしい」と宮寺由佳准教授は語る。

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豊かな人生を送るためにも社会との関わり方を考えて欲しい

大学生になったら、自分や相手だけでなく社会についても興味を持ってほしいと思います。誰がどのようなことに困っていているのか。それは、社会のどこに原因があって発生しているのか。その問題を、どのような手段を用いて解決するのかを具体的に考え行動してみる。それが、社会福祉という学問です。福祉の現場は施設だけではありません。社会の中にはたくさんの福祉の現場があり、それは一人ひとりの生活のなかにもあるのです。

だからこそ、福祉を学ぶと自分自身の生きる力や知識を高めることができるんです。たとえば、自分の人生を想像してみてください。長い人生のなかでは、病気になったり、仕事を失ったり、子育てのことや老後の生活や介護のことなど、誰しもさまざまな問題に直面することでしょう。それぞれの問題を自分の力だけで解決できればハッピーなのですが、現実には上手くいかないこともあります。ならば、どうすれば良いのかという知恵を福祉という学問のなかで身に付けていただきたいのです。福祉の従事者にならなくても、自分自身の生活や人生を豊かにするために福祉を学ぶ価値があると伝えたいですね。

もちろん、入学したばかりの段階では社会とのつながりや自分の人生を考えてみようといわれても、最初はなかなか分かりにくいかもしれません。教員が授業の時間以外にも学生と関わる意味はこの点にあります。私自身も学生には地域の中に出て行ってもらい、大学には地域の人に入ってもらうという活動を授業を越えて積極的に行っています。例えば、埼玉県が主宰する地域のホームレス支援事業にボランティアで参加するよう働きかけています。そうした機会に学生は、日々触れることのないような人に出会い大きな衝撃を受けることができます。

演習は社会の縮図。大人として何が必要かを学べる場

ただ、どんなに大きな衝撃も1回1回をそのままにしておいたら、ただの過去の一つの経験に終わってしまいます。そこに、演習(ゼミ)の大切な位置づけがあります。衝撃を受けたことを深く掘り下げ、どのような現状にあるのかを冷静に観察し、何が問題なのかを分析する。そして、解決の方法や今後社会はどうあるべきかを提言していく。こうした一連のプロセスを卒業論文報告書の作成を通じて経験することが演習の価値なのです。

学生には、このプロセスは福祉を学ぶためだけでなく、社会人として不可欠な技術を培うものだと言っています。社会人には、根拠もなくただ自分の考えをを述べるのではなく、冷静な現状観察と問題分析にもとづいた意見が求められます。特に、福祉の現場では何か問題が生じると「何とかしたい」という情熱だけで先走りしがちです。しかし、情熱だけでは何の具体的な解決策につながりません。根拠が必ず必要になります。だから、学生には必ず聞くんです。「で、どうしてそう考えるの?」と。学生は一瞬キョトンとした顔になりますが、観察と分析の重要性を学ぶ良い機会になっています。

もう一つ私が演習で心がけていることがあります。それは、学生それぞれに発表者、司会者、タイムキーパー、コメンテーター、議事録作成者といった役割を与えることです。担当する役割は定期的に替えていますし、それぞれがどのような役割を持つのかを理解してもらうよう繰り返しアドバイスしています。演習は一つの社会の縮図でもあると考えているからです。


プロフィール

宮寺由佳(みやでら・ゆか)総合福祉学部・准教授
大学では公的扶助論、総合福祉基礎実習などの科目を担当する。主な研究テーマは「スウェーデンの最低生活保障に関する研究」「ホームレスに関する研究」など。浦和レッズの大ファンであるなど地元をこよなく愛している。

※所属学部・役職等は掲載当時のものです。


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