《総合福祉学部》講師として卒業生が来校 「エッセンシャルスタディ」

6月8日(火)、4号館4403教室で行われた総合福祉学部1年生の「エッセンシャルスタディⅠ」に、本学の卒業生が講師として来校するということで様子をうかがってきました。講演をしていただいたのは今年の3月に浦和大学総合福祉学部を卒業した上原勉(うえはら つとむ)さんです。

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上原さんは「全盲」という大きな障がいを持ちながらも、在学中に社会福祉士の国家試験に現役合格し、現在は横浜でソーシャルワーカーの仕事をされています。

講演の前に

講演をはじめる前、上原さんが講演を行う際に使用するパソコンについて説明をしてくださいました。そのパソコンには、目の不自由な人がパソコンを使うために考えられたソフトが導入されていました。それは入力した文字を次々と読み上げていく機能のついたワープロソフトで、講演の最初に配布されたレジュメも上原さんがパソコンで作成したとのことでした。このソフトは浦和大学のパソコンにも導入されています。

全盲の生活とは

上原さんは仕事やプライベートを含めたご自身の生活や環境について語ってくださいました。まずは日々の「移動」について。浦和大学では4年間通い続け、学内の道にも慣れていたのでスムーズに歩けたそうですが、現在住んでいる横浜の街はまだまだ安心して歩けないそうです。

続いて「文字処理」をテーマに語ってくださいました。上原さんをはじめ、全盲の人は目が見えません。とは言え仕事をなさっている以上、書類が付きものです。先ほどのパソコン文書とは違い、印字された紙には音を発して読み上げる機能はありません。そこで役立つのが「OCR」と呼ばれる技術で、これは紙の文書をデジタル化して機械が文字を認識し、読み上げることができるようになる技術のことを指します。文字の認識は完璧ではないですが90%程の精度はあるのだそうです。

学びに関する支援体制

次に、上原さんが浦和大学に在学中のことについて語ってくださいました。

上原さんは常にパソコンを持ち歩いて、授業では必要なことを入力しながら受けていたそうです。1年生の4月にはもう友達ができて、いろいろとサポートをしてもらったそうです。大学のサポート体制はそれだけでなく、障がい学生の支援体制(障がい学生支援委員会・グループ)は上原さんの活躍もあり整ってきています。担当の教員、学生スタッフからのサポートは大変助けになったと仰っていました。また、実習に関して、通常の授業であれば慣れ親しんだ先生が指導してくれますが、現場実習では実際に動いたり、実習先によっては利用者さんだけでなく業者さんと応対があったりと様々なケースがあり大変です。しかし、実習先にも障がい学生支援サークルの学生によるサポートがあり、たいへんありがたかったとのことでした。

障がい学生支援グループ

このグループは障がいを持つ学生の大学生活をサポートする組織で、所属する時にはしっかりとした養成講座があるそうです。主な役割は、聴覚障がいを持つ学生には授業でのノートテイクに付いたり、視覚障がいを持つ学生には空き時間を利用してテキストを読んでもらったり移動時の案内をしたりと様々です。

上原さんは年上なのですが、すぐに彼らと仲良くなれました。最初はやはり敬語や丁寧語だったけれど、3ヶ月もすれば友達同士の口調で会話をすることができたそうです。彼らとの友情の輪はテーマパークへ行ったり、カラオケや食事、映画に行ったりと「遊び」を通して広まっていきました。そこにはボランティアする側・される側という関係ではなく、まさに友達同士の関係性がありました。4年生の最後には卒業旅行にも行ったそうです。

仕事について

浦和大学在学中に社会福祉士国家試験に現役合格した上原さんは、その資格を活かし横浜でソーシャルワーカーとして活躍されています。ある時、「相談に来てみたけれどいざ相談する相手が全盲の職員だったときのお客さんの気持ちはどうなのだろう」、と考えたそうです。しかし私には社会福祉士という国家資格があり、それが自分への自信になり勇気が湧いてくるのだそうです。また、上原さんは社会福祉士の資格を持っているということは、社会の人の自分を見る見方が全く違うということをつくづく感じると仰っていました。ですから、今回の授業を聴講した後輩学生のみなさんには頑張って社会福祉士の国家試験に合格してほしいと仰っていました。

また、上原さんの卒業論文のテーマでもある、視覚障がい者の就職に関しても説明してくださいました。視覚障がい者の就職率は、公式には20.4%、日本には31~32万人ほどの方がいるとのことです。企業とはボランティア活動ではなく利益を追求しなくてはならないのが実情ですから、視覚障がいや重度知的障がいの方はそれだけで門戸が閉ざされてしまう傾向があるようです。最近は、車いすの人の雇用も敬遠する動きがあり、内部障がい者を障がい者枠の雇用を前提に考えているように感じている、と体験を通して仰っていました。

一人暮らし

上原さんは学生たちにこう問いかけました。『目の見えない人が、例えばスーパーに夕飯の買い物に行くときのことを考えてみてください。そこにはどんな困難が考えられるでしょうか』。学生たちからは目的地まで行くことだけでも危険。食材の場所や傷み具合、レジの場所が分からない。人が混雑して歩きづらい、などが挙げられました。

上原さんがマンションから目的のお店まで行く場合、例えば魚屋・ガソリンスタンド・飲食店などからは匂いがして、パチンコ屋の前では賑やかな音がする・・・、こういった情報を基に目的地までの目印とするそうです。いよいよ目的のスーパーにたどり着いても商品がどこにあるのか分からない。人ごみでは白杖(本来白杖は自分が目に障害があるという表とし、安全を確保する意味では持つ)を持っているかどうかも判りづらい。レジ待ちの列がどう並んでいるかも分からない。ですから上原さんはガイドヘルパーを頼んでいるとのことでした。町を歩く時、点字ブロックは生命線です。しかし、自転車や品物がおかれていたり、悪気はないが、点字ブロックの上に立ち止まっている人も結構います。みなさんはそうしたことを見つけた時は、ものを取り除いて下さるとありがたいと仰っていました。

また、視覚障がいの人を見かけたら是非声をかけてみてほしいと学生たちに語りかけていました。こそあど言葉(あっち・こっち等)は分かりづらい。案内をするときは距離や音、匂いのする場所などを目印に、手に地図を描いてくれる(クロックポジションで)とメンタルマップが浮かびやすい、階段は上りか下りを先に教えてあげて欲しい。ただ、障がい者には、自分の病気や障がいの原因など話したくない人もいるので、その辺は話しかける時、注意が必要、といったサポート方法や心配りも教えてくださいました。

最後に――

上原さんは、自分はソーシャルワーカーとしては駆け出しだから電話相談やメールでの相談、面接相談などの業務が中心だけれど、先日「社会福祉士の実習生の担当をしてみないか」と職場の方から提案を受けたそうです。大学を卒業してからも後輩たちと係わる機会があるのは嬉しいと仰っていました。そして、1つ1つの仕事を確実にこなしていって、お客さんに信頼していただけるソーシャルワーカーになっていきたいと語り、講演を締め括られました。


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