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【映画コラム・#11】舞台『The Terms of My Surrender(「私の降伏条件」)』遅くなったけど、まだ話していい?つきあってくれる?

図書・情報センター長、こども学部教員、岩本裕子(ひろこ)による、映画コラム11回目をお届けします。12日間のアメリカ出張を終え、無事帰国しましたので、最新アメリカ情報をしばらく続けてお送りしたいと思います。まずは、ニューヨーク最終日8月17日の夜に見たブロードウェイの舞台の話です。

前回の『沈黙』紹介の最後で「夏休みが終わる前にはアップできるように頑張ります!みなさんも、充実した夏をお過ごし下さい」とお伝えしましたが、みなさんの夏休みはいかがですか?

高校生にとってはあと1週間となった夏休み、進路を見定める貴重な時間を過ごせますように!また大学生の場合は夏休みも半ば、充実した時間になっていますか。卒論を書き続けている4年生には、この夏の作業はあなたの人生の大きな力になりますので、苦しくても頑張りましょうね。

8月8日に成田を発った私はワシントンD.C.で3泊、ニューヨークに移動して7泊、予定していた史料(百年前に活躍した黒人女性教育者が残した手書き史料など)を読んできました。さらにニューヨーク公立図書館(NYPL)ハーレム分館で行った史料収集を、帰国後もウェブ上で続けられる環境を整えました。最初の訪問日8月12日から3か月間は、NYPLとネットでつながることができます。残された11月中旬までウェブ上で仕事を続けます。

ワシントンでは、夜の時間を外で過ごすことはほとんどありませんが、ニューヨークでは毎晩何かしら「仕事」につながる貴重な経験を続けています。昼と夜、2倍の仕事ができることになるのが、ニューヨークという街の特徴です。

今回は7泊のうち、日曜夜は例年通り友人宅に招待されましたが、あと6日の過ごし方は以下でした。リンカンセンターでMostly Mozart というコンサート・シリーズを2回、ミュージカルを2本(The Bronx TaleとCats)、今年のトニー賞で話題になった演劇を1本(A Doll’s House Part 2)さらに、今回紹介するマイケル・ムーア監督のブロードウェイ・デビューの舞台でした。ニューヨークを発つ前、最後の夜8月17日に観ました。

8月10日を初日に、3か月間限定で上演される「The Terms of My Surrender(「私の降伏条件」)」というタイトルのワンマンショーです。ムーア監督という映画人を知っていますか?日本では女性芸人が似ているということをネタにTVなどで話すので、どんな人かはわからないまま「聞いたことがある」という程度の情報は持っていることでしょう。

ムーア監督のフルネームは、Michael Francis Moore で、ミドルネーム(欧米の人たちは洗礼名などとして苗字と名前の真ん中にもう一つ名前を持ちます)は「フランシス」ですよ!前回『沈黙』の回の復習になりますね。現在のローマ教皇の名前です。1549年に日本に初めてやってきた宣教師ザビエルのファーストネームでしたね。覚えていますか?

こんなミドルネームから類推できますが、ムーア監督は敬虔なカトリック教徒で、毎週日曜日は礼拝に出かけるそうです。ゼネラルモーターズの生産拠点の一つであったミシガン州フリントで、アイルランド系の家庭に生まれました。ムーア監督は14歳で教区の学校に入学し、続いてデイヴィソン高校に進学、同校を1972年に卒業しました。

「自分の政治的な活動の始まりは、高校卒業時点だった」と舞台で話し始めたのですが、卒業と同時に高校の校長と副校長の解雇を求めて、教育委員会選挙に出馬して当選し、任期終了までに校長と副校長は辞職したそうです。当時の教育委員会のメンバー全員で写った写真(18歳のムーア監督は毅然とほっそり!した青年)を舞台で、大写しで見せてくれました。

日本人がムーア監督を知るきっかけは、1999年に起こったコロラド州コロンバイン高校銃乱射事件を題材にした映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年)だと思います。銃社会アメリカの現状分析をし、2003年度アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した作品です。このドキュメンタリー映画については、こども学部「歴史入門」のテキストである拙著『スクリーンに投影されるアメリカ』(メタ・ブレーン)第1部第3章「イラク戦争を見すえる」で論じました。2001年「9月11日」直後に、共著で依頼された拙稿に加筆修正したものですが、15年経っても書いた内容が古くないと思えるのは、残念ながらアメリカ合衆国そのものが変わっていないからかもしれません。

当時はブッシュ(息子)大統領、現在も同じ共和党の大統領だからかもしれませんが、8年間のオバマ大統領民主党政権が「今は昔」のような、恐ろしい現状ですね。ムーア監督は、前述したジョージ・W・ブッシュ大統領を批判した映画「華氏911」も作って、世界的ヒットとなりました。

こんな社会問題をテーマにしたドキュメンタリー映画を作り続けるムーア監督が、ブロードウェイの舞台でデビューした今回「The Terms of My Surrender(「私の降伏条件」)」では、当然ながら現在の大統領批判が大きなテーマとなっています。

舞台監督を担当したメイヤー氏は、5月時点の記者会見で「世界が今必要としているのは、マイケル・ムーアがブロードウェイの舞台に立ち、芝居でしか見ることのできない対話を通して、面白いストーリーと扇情的な政治的見解を、観客と共有することだ」と発言したそうです。ネット情報ですが。


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